現場に思いを馳せ、数字の裏側にある“背景”を見る 財務部長インタビューVol.7 NTT都市開発株式会社 取締役財務部長 小泉 圭
SHARE

NTTグループ主要会社の財務部長が、これまでのキャリアとめざす未来について語る本連載。第7回はNTT都市開発の小泉 圭 取締役財務部長です。
地元で起こった阪神・淡路大震災の際、帯広から応援に来ていたNTTの復旧車両を見て、その規模感と懐の深さ、日本のインフラを担っているという責任を実感し、入社を志したという小泉部長。入社後はNTT東日本の事業計画関連部署を中心に幅広い業務を経験。
更にM&Aや営業、不動産企画など、多岐の領域で活躍され現在に至ります。
今回は、小泉部長のこれまでのキャリアと、NTT都市開発のこれから、そして今だからこそ財務が発揮すべき役割について、語っていただきました。
(プロフィール)
小泉 圭
NTT都市開発株式会社 取締役財務部長
慶應義塾大学経済学部卒業後、1996年日本電信電話株式会社に新卒入社。主にNTT東日本の各部門で事業計画に携わる。その間、持株会社での出資・M&Aマネジメント、千葉支店での営業課長、東京事業部での不動産企画部門長なども経験。2022年にNTT東日本経営マネジメント部門長、2025年にNTT都市開発財務部長、2026年より現職。
――本日はよろしくお願いいたします。まずは小泉部長がNTTに入社されたきっかけを教えてください。
私が入社したのは1996年で、その前年に、私の出身の神戸で阪神・淡路大震災がありました。地震の2、3カ月後くらいに帰省したのですが、水道管やガス管が路面に出ているような、応急復旧の状態がまだ続いていました。
神戸まで応援に来てくれているのかと驚き、有事の際にそれだけの規模で団結できる会社の懐の深さに強く感銘を受けました。それがきっかけで、日本のインフラを支える大企業の意義を実感し、NTTに入社しました。
――入社された当初は、どのような仕事をしたいとお考えでしたか。
大学が経済学部だったこともあり、ファイナンスに関わる仕事がしたいと思っていたので、経理・財務系を志望しました。新入社員だった当時は理解していなかったのですが、当社では経理と財務が分かれており、経理は事業計画がメインの仕事です。新入社員だった当時はその違いを理解しないまま希望を出し、結果として事業計画に配属されました。
それ以来、キャリアの大半を事業計画で過ごしてきました。決算のような本当の財務の仕事に携わったのは、2025年にNTT都市開発に来てからです。ようやく念願が叶ったというところですね。
――入社後、最初に担当された仕事について教えてください。
入社1年目から3年目まで、NTT東日本のNTT東京支社 港支店で、担当エリアのダイヤル通話料など、電話の収入予測を担当しました。支店単位かつ電話領域だけだったとはいえ、当社の収支構造を早い段階でキャッチアップすることができたと思います。
この3年間で学んだ一番大切なことは、仕事に対する向き合い方でした。自分の予測が外れたり間違ったりすると、会社の経営に大きなダメージを与えてしまいます。収入が100円のはずが80円になれば、使える予算もまったく変わってきてしまう。だからこそ、事業の背景や動向をきちんと自分ごととして捉えたうえで数字を作り上げる。そういう真摯さが必要なのだと痛感しました。この考え方は、その後のキャリアを通じてずっと自分の軸になっています。
その後は東京支社に異動しました。規模が大きくなる分、精度もより求められますし、扱う物量も増えます。ただ、やみくもに精度を突き詰めようとすると際限がないので、限られたキャパシティの中でどう成果を出すかということに、とても苦労しました。
非常にハードな日々ではありましたが、それでも乗り越えられたのは、上司や先輩が未熟な自分を助けてくれたおかげです。仕事自体は個人プレーに近かったですが、マインドとしてはチームワークだったのかなと思います。
――その後についても教えてください。
入社7年目に、本社に異動しました。本社は支社と比べて更に情報量が上がります。必然的に自分自身の仕事に対する視座を上げることができました。
例えば相互接続などに関しては、支店・支社では詳しい方もなかなかいませんし、情報も降りてきにくいところがあります。しかし本社には専門家がいるので、そうした方々から情報を聞き出したり他部署と連携したりしながら、単に計算するのではなく「稼ぐ力」を導き出したうえで計画する。そういう仕事の仕方を学び、実践することができました。
――本社を経験された後は、どのようなキャリアを歩まれましたか?
その後は持株会社に異動しました。当時は、NTTドコモやNTTデータなどが出資やM&Aを盛んに検討しており、その内容を聞いたうえで実行を判断する仕事を担当しました。それまでの事業計画の仕事はP/L中心でしたが、ここで初めてB/SやC/F、企業価値評価(バリュエーション)といった知識に触れることができました。
それまでの経験で活きたのは、「勝ち筋が見えているかどうか」を判断する視点です。事業計画の仕事は、投資に対してそれ以上のリターンが得られるかを見るものですが、M&Aもまったく同じです。出資に対してシナジーも含めたリターンがきちんと見込めているか。そこは今までの経験からアドバイスできた部分だったと思います。
この経験は、不動産デベロッパーである今のNTT都市開発の仕事にも役立っています。不動産とファイナンスは別物と思われるかもしれませんが、実はよく似ています。P/Lだけではなく、資金効率やB/Sへの影響を見る視点が活きていますね。
その後は、千葉支店で営業課長を2年間経験しました。フレッツ光の販売を統括する立場として、初めて現場を経験することになりました。
それまで事業計画の仕事では、先に述べたとおり数字の背景や動向を意識することを肝に銘じていましたが、やはり現場経験に勝るものはありません。
現場ではお客さまからのクレーム対応もしなければなりませんし、営業成績も厳しく問われます。ただ同時に、それが全社の収入やお客さまの利便性に直結しているのだと肌で感じることができました。
この経験は現在にもつながっています。事業計画にしても財務にしても、例えば収入が予想以上に上がった、あるいは上がらなかった、という表面上の数字だけを見て判断するのではなく、その裏側にある理由をよく検証するようにと、今の部下にもよく伝えています。
――その後のキャリアについても教えてください。
入社15年目以降、経営管理部門担当課長と担当部長を歴任しました。対外的にも公表するような、全社の事業計画を作成する仕事でした。この時期は本当に会社全体を取り仕切っているような感覚があり、やりがいはとても大きかったですね。総務省への説明に赴くこともありましたが、その時は自分が会社を代表しているのだという気概で取り組んでいました。
その後は、東京支社で、不動産企画部門長を約2年間経験しました。電気通信の仕事は大切な役割ですが、目に見えないものを扱います。一方で、不動産は実際に目に見え、それに価値を見出してお金を払っていただけるお客さまがいる。そういうところにずっと携わってみたいと思っており、念願叶ったという形です。
実際には、電話局の跡地に賃貸マンションを建てたり、かつての電話窓口の跡地をコンビニなどに貸し出したりして収益を上げる仕事をしていました。現場感も含めて、とても面白かったですね。
その後、本社のグループ事業推進部門長、経営マネジメント部門長を歴任し、全社の事業計画の中枢を担いました。当時は固定電話の需要がどんどん縮小していく中、頼みの光回線が思うように伸びていかない、事業的にはなかなか厳しい時期でした。次の勝ち筋をどう見出すか、新しい会社を作ったり、営業体制を立て直したりと試行錯誤を重ねた時代です。
事業計画や財務の視点だけでなく、現場が実際にどう動いているのか、もっと効率的に、もっと稼げるようにできないか、という基本に立ち返って全社の動きを変えていく仕事でした。社長ともいろいろと議論しながら取り組みました。大変でしたが楽しい時代でしたね。
この時期の経験は、今の財務部長という立場に直結していると感じます。財務の面から発言できる部分はもちろんありますが、それだけにとどまらず、現場の動きを把握してリスクを早めにキャッチし改善する、あるいは伸ばせるところにはリソースを投下する。お金も人も含めて全体をマネジメントできる立場だからこそ、そこがしっかりできる会社は伸びると思っています。
――現在の財務部長としてのお仕事に対する心がけを教えてください。
我々は仕事を通じて社会に貢献し、いい未来を作っていくことを第一の目標とすべきだと思っています。財務として適切な決算はもちろんですが、それ以上に大事なのは、社員一人ひとりのパフォーマンスを最大限発揮してもらえる環境を整えるということです。
――「攻めの財務」として経営に価値を還元していくことが今求められていると思いますが、NTT都市開発の財務部がめざすビジョンを教えてください。
事業がきちんと勝ち筋に乗っているのかを財務視点で見定めながら、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり経営に提言できる。そういう、まさに攻めの財務戦略がなければ、会社は成長していかないと思っています。
財務のメンバーは性格的には大人しい人も多いのですが、皆それぞれに素晴らしい能力を持っています。ですから、少しだけ背中を押すような声かけを心がけています。例えば、「こうすればより事業実態が分かるよね」「素晴らしい分析だから、ぜひ上に持っていこうよ」というような形です。すると、最初は尻込みしがちなメンバーも、どんどん新しいものを作ってくれるようになります。引き続き、財務系人材のプレゼンスをもっと上げていきたいと思っています。
――不動産事業を取り巻く環境についてはどうご覧になっていますか。
不動産事業は現時点では増収増益で比較的好調に見えます。ただ、足元では建築資材や人件費の高騰、金利上昇という逆風もあります。そんな今だからこそ、財務の出番です。プレモータム・シンキングで、金利のマネジメントや投資判断をしっかり目利きできる体制を作っていくことが求められています。
会社全体としてはこれまで良い意味で前のめりだった部分もあると思いますが、ここはブレーキ、ここはアクセルというように、財務の立場からバックアップできる体制を作っていきたい。それこそが事業マネジメントであり、仕事の醍醐味だと感じています。
――こうした状況だからこそ、アルムナイのみなさんとの関係性も大切になってくるかと思います。
財務という共通の基盤があったうえで、いろいろな経験をお持ちの方が多いと思います。そうした優秀な方々の新しい知見や考え方は、ぜひ取り入れていきたいですね。
当社も近年はキャリア採用入社のメンバーが非常に増えました。不動産はファイナンスに非常に近い領域なので、SPC(特別目的会社)を活用したスキームなど、グループファイナンスで借り入れるだけにとどまらない、幅広いファイナンスの手法を学べる機会があることに魅力を感じ、入社してくださる方が多い印象です。
活躍しているメンバーは、大きく2種類に分けられると感じています。一つは税理士や公認会計士のような専門家で、決算業務の即戦力として活躍いただいています。もう一つは、大きな会社で経理や事業の経験を積まれた方です。長年この仕事をしていても、なかなか持てないような「大局観」を持っているメンバーも多く、物の見方や判断基準の面で助けられています。
――最後に、アルムナイのみなさんへメッセージをお願いします。
元上司としては、退職された方々が今元気にしているだろうか、何年経っても気にかかるものです。だからこそ、こうして関係を絶やさない取組みは、とても良いことだと思っています。
NTTグループを離れたみなさんはさまざまな場所で活躍をなさっていると思います。もしグループにいた時の経験が今の仕事に活きていれば、それは私たちにとっても嬉しいことです。ぜひ交流会などで、近況を聞かせていただけたら嬉しいです。
ご存じの通り、NTTグループは通信だけでなく、私たちのような不動産事業や、ドコモが手がける金融事業など事業領域が多岐にわたります。さまざまな形でみなさんの知見が活きるフィールドだと思いますので、これからもお互いに助け合える関係を築いていけたら幸いです。
