NTT財務の「人材育成拠点」として役割を果たす 財務部長インタビューVol.6 NTT東日本株式会社 執行役員CFO 財務部長 花木拓郎

NTTグループ主要会社の財務部長が、これまでのキャリアとめざす未来について語る本連載。第6回はNTT東日本の花木拓郎 財務部長です。

入社前から財務を志し、そして入社以来、一貫して財務畑を歩んできた花木部長。IRを中心に、会計、税務など、財務の主要領域を経験してこられました。特にIRに関してはキャリアが長く、アベノミクスによる株価上昇が続いた時期の6年間にわたり、IR室担当課長・担当部長として、NTTのIRをけん引してきました

今回は、花木部長のこれまでのキャリアと、NTT東日本財務のこれから、そしてご自身が果たそうとしている役割について、詳しくお聞きしました。

花木 拓郎(はなき たくろう)
NTT東日本株式会社 執行役員CFO 財務部長

成城大学経済学部経営学科を卒業後、1995年、日本電信電話株式会社に新卒入社。NTTファシリティーズ、持株会社、NTT東日本にてIR、会計、税務を中心に経験。2017年よりNTT東日本の会計部門長、原価管理部門長、税務・資金部門長、22年に持株会社のIR室長を歴任し、25年より現職。

目次

通信の30年と自らの歩みを重ねて——NTT入社の原点

——本日はよろしくお願いいたします。まずはNTTに入社されたきっかけと、財務の道を志した理由を教えてください。

就職活動当初は、銀行や商社を中心に検討していました。その最中、OBの先輩から当社の話を聞いたことをきっかけに、企業研究をしたところ、だんだんと興味がわいてきたのです。

その中で思い出したのが、以前にどこかで耳にした、「一つの大きなビジネスが花開いて成熟するまでには、約30年かかる」という話です。当時通信業界は、これから大きく発展していこうとするタイミングでした。まさに自分の会社員人生と、その30年が重なるわけです。それなら、キャリアを賭けてみる価値があるのではないかと思い、入社しました。

そして入社前から、配属希望先は財務でした。その理由は、社会人の先輩方から「バックオフィスなら、経営に近いところで仕事ができる」と教わったからです。中でも財務は、経営判断に大きく関わる職務であり、特に成長できるポジションだと考えました。

NTT財務のあるべき姿を学んだ持株会社時代

——若手の頃は、どのようなキャリアを歩まれましたか?

最初はNTT横浜西支店の経理課で3年間、現場の仕事を経験しました。その後、NTTファシリティーズの本社経理部に異動し、会社全体の決算を見る仕事に就きました。20代は私しかいないような職場で、先輩たちは職人気質のベテランばかり。右も左も分からない中ではありましたが、この早い段階で本社経理の仕組みや、良い経営判断のために、財務がどういった数字を作っていくべきなのかを垣間見ることができたのは、非常に勉強になりました。

その後、NTT持株会社のIR担当に異動しました。正直、辞令が出たときは「IR」の意味が分からず、隣に座っていた新入社員に、「IR担当って何するの?」と聞いた記憶があります。というのも、当時はIRという仕事が、日本でようやく認知され始めた時期でした。当社においても、株式担当が総務部から財務部に移り、投資家へ積極的にアピールしていく方向に変わっていく過渡期だったのです。

私は最初、会計の経験を活かして、招集通知や有価証券報告書の作成など、法定書類の作成を担当し、その後、株主還元の実施スキームの構築にも携わりました。当時は、株主還元の有力な手法である自己株式取得が法律で認められて間もない頃でした。数千億円規模の買い付け資金をどう調達するか、政府という大株主にどう説明するかといったことを検討していましたね。まだ上場していたNTTドコモの株を売却して、その資金で自己株式取得を行うスキームの実行や、政府保有株の大規模な買い付けなどが当時の実績の一つです。

——その後のキャリアについても教えてください。

その後は、同じくNTT持株会社で会計・税務担当に異動しました。スタンダードな業務に加えて、当時は税制改正のロビー活動にも携わりました。経団連や財務省の主税局と対話しながら、我々の事業にメリットのある税制の見直しを提案する仕事です。

そこで初めて、名だたる国内大企業の税務担当の方々と仕事をしました。そこで、彼らの知見の深さ、そして自分たちの会社のために粘り強く主張する姿勢に衝撃を受けました

NTTグループは、元々が国営ということもあり、「税金は正しく納めよう」という法令遵守意識が強い組織です。それ自体は正しいし、フェアだと思います。ただ、企業としての競争力を高めるという観点においては、もっと貪欲な姿勢が必要なのではないか。彼らの仕事ぶりを間近で見る機会に恵まれ、そう考えるようになりました。コンプライアンスを遵守することは大前提のうえで、自分たちの権利をしっかり主張し、そのための知見を深める。その重要性については、今でも部下に伝え続けています。

アベノミクススタートのタイミングで、再びIRへ

——その後、NTT東日本の支店での課長職を経て、再びNTT持株会社のIR担当に着任されたのですね。

NTT東日本の神奈川支店で、事業計画を担当する課長として、初めてのマネジメント職を経験しました。入社時の配属が神奈川エリアだったので、支店のメンバーの多くが、入社当時に仕事を教えてくださった先輩たちでした。そこに予算を担う立場として戻ってくる形となったわけです。こうした事情もあり、権限をアピールするのではなく、皆で一緒になって、時間をかけて議論し、合意形成していくというやり方で、仕事を進めていきました。

その後、再びNTT持株会社のIR担当に着任しました。やはりIRは刺激が多くて面白いですね。着任当初は、株価が上場来最安値に近い水準でしたが、そこからアベノミクスの追い風もあり、株価が上昇していく局面に入りました。その勢いを止めないための施策を考え続けた6年間でした。

具体的には、「資本をどう使い、どう株主に還元していくか」という基本的姿勢を、投資家に対してしっかり説明するようにしました。ROE経営やコーポレートガバナンスの強化が求められていた時代背景とも合致していたので、投資家の反応は良く、実際に株価にも反映されたのではないかと思います。

財務部長としてめざす「人材育成拠点」としての役割

——現在の財務部長としての仕事への心がけと、NTT東日本財務部の将来像について教えてください。

財務部のメンバーの仕事を、もっと外に打って出るものに変えていきたいと考えています。決算や財務諸表を作る部分は、どんどん効率化してもらう。その上で、数字の意味するところを分析し、経営改善にどう活かせるかを考えてもらいたいと思っています。

財務部のメンバーは真面目なのですが、その分大人しく、アピールを不得手としている人が多いように見受けられます。彼らの成果が正当に評価され、経営に貢献するものとしてより評価されるように働きかけることが、私の役目の一つだと思っています。

もう一つ、NTT東日本財務部が担っているのは、グループ財務全体の「人材育成拠点」としての役割です。NTTグループの財務系人材は約2,500人いますが、そのうち約700名はNTT東日本の出身なんです。グループ全体のためにも、しっかりとした中長期的な目線で社員を育成していくことが、当部の重要な役割だと考えています。採用し、育成して、その人の特性に応じてグループ各社に送り出す。そしてまた戻ってきてもらう。このサイクルを途切れることなく続けていかなければなりません

私がNTT東日本で部門長をしていた時期に、ジョブ型雇用への移行がありました。それまで人事部門が担っていた研修が縮小され、各ラインで育成していく必要が出てきたのです。そこで、今後10年の社員をどう育成するかという研修計画を作りました。それを基に、今も社員を育成し、グループに輩出しています。

そして同時期に、初めてキャリア採用を始めました。不動産の利活用を担当するチームに1名、基幹システム刷新のプロジェクトに1名を採用しました。この2人が非常に優秀で、深い経験を持った人材が入ることで、組織が活性化しました。

特にシステム刷新を担当した社員は、非常に細かいステップでスケジュールを組んでくれました。そして、そのステップに沿って進めたら、見事に成功したんです。今はNTTドコモに出向し、そこの基幹システム導入プロジェクトで活躍しています。キャリア採用によって、必要不可欠な人材を掘り起こすことができた。外の知見を取り込むことで、組織に化学変化が起きる。その効果を実感しています。

アルムナイのみなさんへ

——最後に、この記事をご覧になるアルムナイのみなさんへメッセージをお願いします。

財務の仕事は万国共通で、どこの企業に行っても同じ目線、同じ倫理観で仕事ができます。だからこそ、NTTの外で経験を積まれたみなさんの知見は、非常に価値があると思っています。

人材が流動する社会になってきたことは、私は歓迎すべきことだと考えています。外に出てチャレンジする人のバイタリティも、そしてチャレンジによって得られる知見も、非常に価値があることです。だからこそ、前述したようにキャリア採用に積極的にチャレンジしていますし、それで入社してくれた社員を大切にしています。もちろん、アルムナイのみなさんとのコミュニケーションも、再雇用の間口も広くしています。

みなさんが新たに得た知見をぜひ貸していただき、一緒にNTTグループの財務を盛り上げていただければと思っています。また交流会等でお会いできることを、楽しみにしています。

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