アルムナイ×NTTグループ社員 AI時代の財務人材に必要な「本質を見抜く力」 【加藤 正太さん(NTTファイナンス)× 近藤 晃生さん(日東電工)】
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NTTグループで活躍する財務人材と、現在は他の舞台で活躍する財務アルムナイ。かつて同じ組織に属し、そして今も同じ財務領域に向き合っているからこそ、本音で話せるのではないかということから、今回は対談企画を実施しました。NTTファイナンスで連結決算を担う加藤正太さんと、NTTグループを経て、現在は日東電工で連結決算、開示、グループガバナンスを担当する近藤晃生さんにご登場いただきます。
2人はかつて、NTTグループのIFRS導入プロジェクトで共に奮闘した間柄です。共通の体験を持ち、今も互いの場所で連結決算を担当する2人に、NTTグループの財務業務の変化や現場で感じる課題、社外での経験を通じて見えた気づきなどを語り合ってもらいました。
(プロフィール)
加藤 正太(かとう しょうた)
2003年、医薬品卸会社に入社し会計システム開発を担当。08年にNTTビジネスアソシエへ転職し、会計制度、税務企画担当を経験。16年より連結決算を担当し、18年からは主査としてIFRS導入を先導。20年より年金部門にて退職給付制度の見直しに従事した後、23年よりNTTファイナンス連結決算担当課長としてNTTグループの連結決算業務に従事。※インタビュー当時。26年7月に、NTT 財務部門 会計・税務担当部長に着任。
近藤 晃生(こんどう あきお)
2009年、NTT西日本に入社。営業職を経て11年よりNTTビジネスアソシエにて経理キャリアをスタート。17年よりIFRS導入推進担当として制度設計・グループ調整を担当し、導入後は連結決算業務に従事。22年にNTTソルマーレを経て退職、23年より日東電工株式会社にて連結決算、開示、グループガバナンス業務を担当。
加藤 まずは、改めて自己紹介から始めましょうか。私は現在、NTTファイナンスで、グループ約1,000社の連結決算を担当しています。有価証券報告書の作成、四半期ごとの決算発表、海外子会社の対応、新しい会計基準への対応、グループ再編の影響検討など、業務は多岐にわたります。
近藤 私は2023年に日東電工に転職して、連結決算と開示、それからグループガバナンスの業務を担当しています。各社の会計処理に誤りがないか、不正リスクがないかをチェックする取組みにも力を入れています。
加藤 近藤さんとは、私が連結決算を担当していた2017年頃に出会いましたね。当時、NTTグループは米国会計基準からIFRSへの移行という大転換期を迎えていました。しかし私は米国基準への対応で手一杯だったこともあり、近藤さんがIFRS導入推進担当として、制度設計やグループ会社との調整を担ってくれていました。あの時は、近藤さんに本当に助けられました。
近藤 私は加藤さんのいる連結決算チームとは別部隊で、IFRS導入について先行して検討するチームに所属していました。おかげで、いざ導入を本格的に進める頃には、IFRSについてかなり詳しくなっていました。しかし、制度を知っているからといって、実際に導入するのはそう簡単ではありませんでした。グループ各社や監査法人との調整は本当に大変でしたね。
期間が迫っているにもかかわらず、オペレーションの整理ができていなかったり、関係者との合意がとれていなかったりした部分も多々ありました。それらを一つひとつ整理していく過程は苦しかったですが、得たものも大きかったように思います。
加藤 本質を見抜く力が鍛えられましたよね。それまでは、どちらかと言えばルールに従って仕事をしていました。しかしIFRS導入プロジェクトにおいては、「ルールだから」では関係者を説得することはできません。一つひとつのプロセスを行う意味や価値を逐一考え、納得してもらえるように伝えなければなりませんでした。
近藤 基準対応を実際のオペレーションに落とし込む方法自体は、たくさんありましたからね。ただその中で、最小限の現場負担で最大の成果を出せる最適解を見出し、関係者に納得してもらって実行するというプロセスは、今の仕事でも活きています。
加藤 同感です。そしてもう一つ身に付いたのは、「未来を見据える力」です。今は良くても、3年後に成り立たなくなる仕組みを作っては、後任者に迷惑がかかってしまいます。NTTの事業展開を見据え、起こり得る事態を予測しながら対応する。この視点は、今まさに必要とされていると思います。
加藤 「未来を見据える力」は、今後の活躍人材のキーになるのではないでしょうか。というのも、AI時代において、財務人材に求められる資質が大きく様変わりしつつあると感じています。ルール通りに処理ができることではなく、経営判断に資する情報を提供できる力が必要になってきていますよね。未来を見据えた提言を行うことで、経営にバリューをもたらす人材の価値はどんどん高まっていくでしょう。こうした人材になるためには、AIをうまく使っていかなければなりません。
近藤 ただ、AIを使えればいいかというと、それだけではない。出てきた結果が正しいかを見る力が、これまで以上に求められますよね。
加藤 ハルシネーション問題ですね。AIの正誤を判断するには、やはりベースとなる知識と経験が必要です。
近藤 そう思います。今後の組織を担う若手人材にはAIを使えるようになってほしい一方で、経験やスキルも高めてもらわないといけない。ある意味、二律背反の部分を両立させる必要があり、今後の人材育成の大きな課題だと考えています。
加藤 NTTグループでは、AIに会計ルールを学習させて、グループ各社からの問い合わせに対応できる仕組みを作り始めています。約1,000社の連結決算を担当していると、問い合わせが膨大に来ますが、それをまずはAIに聞いてもらう形をめざしています。近藤さんの会社ではいかがですか?
近藤 うちでも似たような取組みを検討しています。会社の規程類を学習させて、「こういう取引があった時にどう処理するか」などを問いかけると、ルールに基づいて回答を返すエージェントを試作したりしていますね。他にも、決算数値の自動分析、不正リスクの検知、仕訳単位での分析など、いろいろ活用できるところを検討しています。監査法人でも同様のことをやっていると聞いています。
加藤 ただ、元データの整備が課題ですよね。学習させるデータの質が結果を左右する。NTTグループは組織再編が多いので、学習が追いつかない部分もあります。
近藤 まさにそこがポイントだと思います。グループ各社でシステムが違ったり、集めてくる情報のフォーマットがバラバラだったりするでしょう。AIの活用以前に、インプットするデータの整備が課題です。5年、10年単位の大きなプロジェクトとして取り組んでいく必要がありますね。
加藤 そうなんです。でも、それを難しいと言っていたら時代に追いつくことはできません。データベースを作って学習させ、今は手でやっているところを自動化していく。そういう仕組みづくりを描いていきたいです。
加藤 私が率いるチームは、今38名です。近藤さんがいた頃は、20名くらいでしたよね。
近藤 そんなに大所帯になっているんですね。
加藤 20代が10名以上いて、非常に活気があります。キャリア採用の方も増え、多様な経験を持つ人が集まっています。外部で培った新たな視点を授けてくれるので、チーム内の議論やコミュニケーションもより活発になりました。頼りになるメンバーだと感じています。
近藤 当社も若手が増えてきていて、連結決算のスペシャリストをめざすのか、ジョブローテーションをしてジェネラリストとして幅広く経験を積むのか、メンバーの志向を聞きながら、育成について考えています。
ジョブローテーションのメリットは、思考力と柔軟性が身に付くことです。多様な考え方を受け入れる柔軟さは、今後の活躍人材のキーポイントになると考えています。
加藤 新たな適性を発見できるのも、ジョブローテーションの大きなメリットですよね。自身の能力や長所に対する気づきを促すのも、先輩社員の役割だと思っています。プロ意識を持ちつつ、変革を恐れない人材。それが将来のNTTを支えていくのではないでしょうか。
近藤 気づきを与えるという意味では、グループ内の他の人と話す機会を作ってあげることも大事ですよね。同じ部署の中だけにいると、視野が狭くなりがちですから。
加藤 そういった意味では、私もアルムナイのみなさんともっといろんな話をしてみたいです。NTTの卒業生だからこそ腹を割って話せることがあると思うので、働き方や、今日もテーマに上がったAI活用などについて、踏み込んだディスカッションができる場があるといいと思います。
近藤 アルムナイには、他企業で働いている人もいれば、独立している人もいて、本当に多様ですよね。一つの会社の中にいると同じような気質の人が集まりがちですけど、いろんな属性の方と話すと刺激になります。コミュニティ内での協業も行われていると聞いています。
加藤 お互いの「今」を知りながら、必要に応じて一緒に価値を生み出せる関係が理想ですね。
近藤 同じ連結決算の仕事をしていると、各社で悩んでいることって意外と似ているように思います。基準に書いてあることは同じでも、どう解釈するかで悩むポイントは共通している。そういった課題を共有できる小さな座組みがあると、お互いにとって実用的ですし、刺激にもなりそうです。
加藤 NTT社員とアルムナイの方の所属会社の社員の交流もあると、気づきや成長につながるんじゃないでしょうか。
近藤 確かに。いろんな形でつながりが広がっていくといいですね。
加藤 今日はありがとうございました。近藤さんは、話す内容がいつも整理されていて、論理的ですね。IFRSを担当していた頃から変わらず、頼もしいなと思います。
近藤 加藤さんこそ、本質をズバッと突いてくださるのは当時から変わらないですね。お仕事でもプライベートでも、いつも勉強になります。またお会いできる機会を楽しみにしています。
IFRS導入で苦楽を共にしたお二人は、現在も親交があり、大阪にお住まいの近藤さんが上京される際などに飲みにいくこともあるそうです。和やかな雰囲気で行われた対談でしたが、AI導入や今後の若手育成など、共通の課題テーマが多く、互いに共感したり意見を述べ合ったりするなど、意義深い時間となりました。
同様のテーマで悩んでいる方、意見交換したいという方がいらっしゃれば、ぜひお二方に直接ご連絡いただくか、アルムナイ事務局までお問い合わせください。答えのない課題がひしめくこの時代、ぜひ共に最適解を探し求めていきましょう。
