多彩な経験から得た高い視座を財務に活かす 財務部長インタビューVol.5 株式会社NTTドコモ 常務執行役員 財務部長   藤城 夏子

NTTグループ主要会社の財務部長が、これまでのキャリアとめざす未来について語る本連載。第5回はNTTドコモの藤城夏子 財務部長です。

元々はスペシャリストになることをイメージして入社した藤城部長。しかし実際は、グループ7社で多彩な業務を経験した後、経理・財務業務未経験で財務部長に就任するというNTTグループの中でも稀有なキャリアを歩むことになりました。

本日は藤城部長のこれまでの道のりと、「未経験の会社・業務でマネジメントを行う」ために大切にしてきたこと、そしてその経験を通して得られた強みについて、お話を伺っていきます。

(プロフィール)
藤城 夏子(ふじき なつこ)
株式会社NTTドコモ 常務執行役員 財務部長

早稲田大学政治経済学部卒業後、1993年日本電信電話株式会社に入社。以来グループ7社にて、資本政策立案・グループマネジメント、IR、法人営業企画、データセンター調達・構築、人事制度、内部監査と多様な業務を経験。
2024年NTTドコモ常務執行役員 財務部長に就任。

目次

当時は珍しかった本社コーポレート部門の女性社員

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、入社時のことを教えてください。

私がNTTに入社したのは、1993年です。当時はバブル崩壊直後の平成不況真っ只中で、各社が採用人数を絞るなど、先行き不透明な社会状況でした。

しかしその中でも、明るい未来を感じさせてくれたのが通信業界でした。当時は「マルチメディア」という言葉が流行語のように取り上げられていた時代で、通信業界は、電話という旧来型のサービスから、コンピューターとインターネットを駆使したデジタルテクノロジーの世界へと大きく発展成長していく期待感に満ちていました。その業界の代表格がNTTだったのです。

また、女性が働きやすい環境であったことも、NTTを選んだ理由の一つです。特に、当時としては珍しく、総合職と一般職という区別がなく、全員が同じ枠での採用であることに惹かれました。

しかし、そうは言っても当時は本社の企画組織に配属される女性社員は多くいませんでした。特に当時の私のような経験の浅い若い女性は、周りの方にとっては扱いに戸惑う部分もあったかもしれません。

しかし入社後は、さまざまな先輩方に鍛えられて成長することができました。特に思い出に残っているのは、20代後半から30代前半の頃に、職場で出会ったある上司と先輩です。

お二方は私が女性だからといって遠慮や忖度をすることなく、高度な資料作成や、タイトな締切のタスクなど、さまざまな課題を与える形で、仕事の基礎を厳しく叩き込んでくださいました。私が現在のポジションに至るまでなんとかやって来られたのは、会社人として極めて未熟だった私を諦めずに指導してくださったお二方のおかげだと思っており、今でも感謝しています

ゼネラリストとしてのキャリアで得られた視座

――入社当時は、どのようなキャリアを希望していらっしゃったのでしょうか。

実は、財務部への配属を希望していた時期もあったのですが、それは叶わず、それ以外に明確にやりたい業務や職種があったわけではないものの、何らかの専門知識を持ったスペシャリストになることを漠然と思い描いていました。しかし実際には、それとは真逆のゼネラリストとしてのキャリアを歩むことになります。

入社から30年余で、分社化前のNTT、NTT東日本、持株会社、NTT都市開発、NTTコミュニケーションズ(当時)、NTT国際通信(当時)、そして現在所属しているNTTドコモと7社を経験。担当業務も資本政策立案・グループマネジメント、IR、法人営業企画、データセンター調達・構築、人事制度、内部監査、そして財務と多岐に渡ります。

――多様な会社や業務を経験したことで、得られた強みはありますか?

幅広い経験ができたことで、各分野での人脈も広がりました。営業、人事、データセンター事業など、それぞれの分野で知り合えたプロフェッショナルの方々とのつながりは、大きな財産になっています

また、グループ7社で多彩な業務を経験したことで、特定のグループ会社や特定の組織、役職などにとらわれない考え方や判断軸が自然と身につきました。現在はNTTドコモに所属していますが、NTTドコモではなくNTTグループ全体の視点で常に物事を考えています。残念ながら、キャリアを通じてスペシャリストとしての高度な専門性を磨くことはできませんでしたが、多彩な経験を通じて培われた俯瞰的な視座は、私の強みであると自負しています。

ぶれない姿勢で、財務を経営のパートナーへ

――とはいえ新しい会社、新しい業務を度々ご経験される中で、苦労されたことも多いと思います。

はい。私の場合は異動のたびに所属会社が変わり、業務も変わったので、その度に大変な思いをしたのは確かです。

特に2007年、NTT都市開発からNTTコミュニケーションズに異動になり、法人営業の戦略立案を所掌することになった時は、初めての会社で、全く知見を活かせない業務だったこともあり、課長としての自分の立場や役割を自問することも多くありました。部下は私を通すよりも直接上司と話した方が早く仕事が進むのに、私に配慮して一旦相談してくれることが心苦しかったのです。

しかし、経験を積み役職が上がるにつれて、判断に必要な情報を集め、専門家である部下の意見も聞いた上で、自分が培ってきた「判断軸」をもとに決断することに躊躇がなくなりました。また、わかったふりをするなど虚勢は張らず「この分野の知見はないので教えてほしい」と自らの弱みは隠さず、部下や周囲の人に助けを求める姿勢も身につきました。このスタンスは、現職のNTTドコモ財務部でも活きています。

――NTTドコモの財務部長として、めざしているビジョンを教えてください。

NTTドコモでは、他の多くのNTTグループ会社とは異なり、財務部で事業計画業務を所掌しているため、経営企画部と財務部が密に連携して、経営戦略立案、施策立案を両輪となって行っています。こうした状況もうまく利用しつつ、財務部が専門家集団として社内での存在感や影響力、発言力を拡大させ、経営層にとって欠かせない戦略的なパートナーとして認知されることをめざしています

また、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ(現:NTTドコモビジネス)、NTTコムウェア(現:NTTドコモソリューションズ)の3社は、2022年7月に経営統合しました。この一環で、3社の財務部のリソースと機能をNTTドコモに集約させる試みを今年の9月より開始しています。こうした戦略を通して、業務効率化も図りつつ、ドコモグループ全体を俯瞰し、ダイナミックな経営判断を可能とする財務体制を構築していくこともめざしています

NTTドコモでの財務部長という立場も、私にとっては今まで繰り返してきた「新しい会社で、未経験の業務のマネジメントをする」ということの延長にあります。しかし財務は、特に専門知識が要求される領域だと考えていたため、着任時は大きな不安と重責を感じていました。

しかし前述の通り、虚勢を張らずに、培ってきた判断軸にもとづき自信をもって意思決定することを貫いていると、周囲のみなさんは驚くほど一生懸命支えてくれます。こうしたことを顧みるに、やはり役職が上がれば上がるほど、こうしたサポートを得られる「人間力」が大事と痛感しています。今後も専門性に長けた、頼れるチームメンバーの力を借りながら、ビジョンの達成に向けて邁進していきます。

アルムナイの新たなチャレンジを応援したい

――最後に、財務アルムナイのみなさんへメッセージをお願いします。

財務系の専門家であるみなさんは、日本国内はもちろん、グローバルにも通用する、経理・財務という“共通言語”を持っているため、国内外問わず、多種多様な会社で活躍できる能力や素地をお持ちなのだと思います。そのため、NTTグループの外で自分の力を試してみたいという気持ちが湧き上がってくるのは当然のことでしょうし、こうした意欲や行動を否定する気持ちは私自身には全くなく、むしろ応援したいと思っています。

しかし、NTTグループの門戸はいつでも開かれています。NTTは本当に巨大な企業グループですから、みなさんがやりたい事はきっといずれかの会社で実現できると思います。私たちは、アルムナイのみなさんが新たな経験とスキルを携えて、再び門を叩いてくださることを、心からお待ちしています。

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