「プロフェッショナル財務人材」を育てる 財務部長インタビューVol.2 西日本電信電話株式会社 執行役員 財務法務部長 鶴田 祐司
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NTTグループ主要会社の財務部長が、これまでのキャリアと目指す未来について語る本連載。第2回はNTT西日本の鶴田祐司 財務法務部長です。営業や商品企画など、さまざまな職務を経験し、現在は財務のトップを務める鶴田部長。ユーザーやクライアントに長らく向き合い、また多くのメンバーを率いてきたマネジメント経験を持つ鶴田部長が見つめるNTT西日本財務法務部が目指す姿と、その実現にむけた取り組みについて詳しくお話を伺いました。
(プロフィール)
鶴田 祐司(つるた ゆうじ)
西日本電信電話株式会社 執行役員 財務法務部長
九州大学経済学部を卒業後、1994年日本電信電話株式会社に新卒入社。
法人営業や商品開発、経営企画や営業企画など幅広い業務とマネジメントを経験した後、2018年7月にNTT西日本財務部担当部長に着任。2024年6月より現職。
――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、入社した頃のことを教えてください。
学生時代は「人々の生活を支える仕事に就きたい」という考えを軸に就職活動をしていました。こうした考えの原点にあるのは、祖母の存在があります。祖母は近所のコミュニティをとても大事にしており、困っている人を気にかけ、率先して世話をしていました。私は周囲から頼られ喜ばれ、愛されている祖母の背中を見て育ったこともあり、人々の日々の暮らしのお役にたちたいと通信や電力などのインフラ業界や生活関連メーカーを中心に回っていました。
その中でもNTTを選んだ理由は、当時通信の世界が大きく変化しつつあるタイミングだったこと、そしてリクルーターの先輩方が使命感をもって働く姿がいきいきと輝いて見えたからです。当時、民営化されてから10年足らずの会社を、自由闊達な組織に変えていきたいと奮闘している姿を見て、自分もその一員になって活躍したいと思い、入社を決めました。
入社してからさまざまな印象深い仕事を経験させてもらいました。中でも記憶に残っているのは、入社6年目の営業企画時代に経験した、フレッツ光の料金企画です。今でこそ2,000万の契約数を超えるサービスですが、当時は光回線を初めて個人ユーザー向けにリリースしようというタイミングでした。設備投資や運用コストを回収しながら、ユーザーが使い続けられる価格設計をどう実現するかに頭を悩ませ、また郵政省(現・総務省)への対応や説明、資料作りに追われる日々でした。しかしこれらを乗り越えて無事ローンチにたどり着き、今日NTTを代表するサービスの礎を築いた一員となれたことは、今でもうれしく思っています。
――初めてマネジメントを経験されたのはいつ頃でしょうか。
最初に経験したのは2007年、岐阜支店法人営業チームの課長です。当時挑戦したことの一つに、営業活動のプロセス管理導入があります。今でこそSFAツールが普及し、当たり前となっていますが、その頃はまだ営業活動がほとんど個々人に託されており、各営業担当の受注までのプロセスや進捗が可視化されていませんでした。そこで各担当者の案件進捗や目標達成率を、私のデスク後ろのホワイトボードに書いて都度更新し、私だけでなくあらゆる関係者に対してオープンにしたのです。
始めた当初はメンバーからの進捗共有が適切になされず、うまく運用できなかったのですが、半年にわたってその必要性や想いをメンバーに粘り強く伝えた結果、ようやく理解を得ることができました。これ以降はメンバーの進捗報告だけでなく、情報共有や相談といった行動も変わってきて、長年達成できていなかった数値目標をその年に達成することができました。
――今、マネジメントをするうえで最も大切にされていることは何でしょうか?
先ほど述べた経験から、皆が同じ方向を向き、団結したときが最もチームとしての力を発揮できると思っています。
そのために財務法務部では、着任早々に「ビジョン」と「バリュー」をつくりました。これはチームが同じ方向を向いて進むための道しるべ、共通言語です。具体的に、まずビジョンは【会社を支え、変革を後押しする「プロフェッショナル」として「経営層と事業部門のパートナー」となり、NTT西日本グループの持続的な成長に貢献する】としています。
このビジョンは、法人営業や商品企画など、直接クライアントと向き合う業務を長らく経験してきた私のキャリアが影響しています。会社が成長し続けるには、新しい価値を生み出さなくてはなりません。その価値とは、常に顧客志向である必要があります。私はこの価値観を財務に異動した今も大切にしており、現在の顧客(パートナー)である事業部門の皆さんの視点に立って価値を生み出すことを主眼に置いています。
また、財務部門の私たちは、事業に関する数値やデータを正しく客観的にとらえ、具体的な課題を導き出しながら、解決の行動を実践するための発信やサポートをしていくことが求められます。事業成果を表すファクトを示すことで、成長のシーズや責任の所在を探索していくことも重要な役割の一つです。
そのために、力をいれていきたいのは「プロフェッショナル」という部分です。専門知識が豊富なだけではなく、しっかりと顧客起点での課題解決、そして提案ができる財務の「プロフェッショナル」をこれからも育てていきたいと思っています。そのために策定したのが「バリュー」、つまり具体的な行動基準、行動規範です。
そして、私自身、これらを地道に発信し続けることはもちろん、メンバーがバリューを存分に実践できる環境づくりも行っています。例えばバリューの一つに「今の当たり前を前提とせず、まずは質問することからはじめます」というものがあります。バリューに書いてあるとはいえ、いきなり質問するのは気が引けるという方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は逆に私から何か疑問や気になる点はないかと投げかけることもありますし、受けた質問にはどんなものであれ丁寧に答えるなど、風通しの良い職場づくりを心がけています。
――ビジョンとバリューをつくって、何か具体的な成果はありましたか。
策定から1年くらい経った頃から、メンバーの一人ひとりの行動が変わってきました。また、他部署の方からも「財務のメンバーはいつも親身になって相談に乗ってくれてありがたい」という声が聞かれるようにもなりましたし、実際に事業部門のKPI設定に、私たちのつくった財務レポートを活かしてくれるようにもなりました。これはメンバー一人ひとりが、バリューを実践しながらプロフェッショナルとして会社に貢献していることの表れだと思います。
――今後の目標はありますか。
先ほど述べたプロフェッショナルの育成が私の一番の使命だと思っています。パートナーである事業部門の皆さんの視点に立ち、新たな価値を生み出すことができる財務人材を、一人でも多く育てていきたいですね。もう一つはDXや生成AIの活用です。効率化や高度化を通した価値づくりについても今後注力していきたいと思っています。
これらの点においても、NTT以外のキャリアを経験し、新たな価値観を身につけてきたアルムナイの皆さんの視点や知見はぜひお借りしたいと思っているところです。アルムナイコミュニティは、同じ釜の飯を食べてきた仲間たちのサードプレイスとして、気軽で自然でありながら、互いに刺激を与えられる有意義な場所にしていきたいと思っています。みなさんと交流会等でお会いできることを楽しみにしています。
- CATEGORY :財務部長インタビュー