財務コンサルタントが語る、卒業したからこそわかる「NTT財務」の卓越性 NTTグループ財務アルムナイインタビューVol.1 鵜飼 邦夫さん
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NTTグループを卒業後も活躍を続ける、アルムナイの皆さんをご紹介する本連載。
第1回は2023年までNTTファイナンスに在籍していた鵜飼 邦夫さんへのインタビューです。
経営者であるお父様の背中を見て育ち、財務会計を志したという鵜飼さん。
現在はPwC Japan有限責任監査法人で、財務コンサルタントとして活躍していらっしゃいます。NTTグループで連結決算を担った経験が、今の仕事で高く評価されているという、その理由とは?今もなお強いNTTグループへの愛についても語ってくださいました。
(プロフィール)
鵜飼 邦夫(うがい くにお)さん
2014年NTTビジネスアソシエに中途入社し、その後NTTファイナンスに出向。
NTTグループの連結財務諸表の作成を担う。2023年、PwC Japan有限責任監査法人に転職。現在はコンサルタントとして財務報告プロセス構築、IFRS導入支援、PMO支援など、ファイナンス領域での企画から実行までを全般的に支援している。 2児の父。
――NTTグループ在籍当時はどんな仕事をしていらっしゃったのですか?
主な業務は、NTTグループ全体の連結決算書の作成です。当時国内外合計で約1,000社におよぶグループ個社の決算書を、連結決算担当として取りまとめ、全てIFRSベースで作成し直し、投資家に発信していました。
――財務会計を志したのは、いつ頃からですか?
大学時代からですね。商学部に進学し、財務会計を専攻していました。
就活時には、当時新聞で読んだ「20代に全力で仕事に打ち込み、実力をつけておくことが、後々の自身のキャリアに大きく貢献する」という内容の記事に影響を受け、若いうちから権限を与えられて主体性をもって仕事に取り組めそうな企業を中心に選考を受けていました。その中で選んだのが、ベネッセコーポレーションのグループ企業です。
当時のベネッセコーポレーションは「日本で一番市場調査をする会社」と言われていました。そのなかでまさに市場調査の実務を担当した後、部署全体を黒字化するプロジェクトリーダーに任命されたのが26歳の頃です。ここで、財務会計をもう一度勉強し直しました。
というのも、黒字化というのは数字との戦いです。売上高とコストを見比べ、どのくらいコストカットすれば黒字化できるのか、どの項目がいくらカットできそうなのか分析し、一つ一つトライしていくという作業。経営コンサルティングを学んだり、日商簿記検定一級を取得したりして、改めて数字との向き合い方について学びながら、この地道な作業を一つ一つクリアしていきました。その結果、2年間で税引前純利益をマイナス2,600万円からプラス300万円に改善することができたのです。
――すごいですね。その後、NTTビジネスアソシエへ転職したきっかけは何だったのでしょうか?
これだけ勉強して実績も作ることができたのなら、日本を代表するような大企業で財務会計に挑戦してみたいと思うようになったことです。
日本で最も管理体制がしっかりしていて、多くの事業を展開していて、経験値が積めるところはどこだろうと考えたときに、それはやはりNTTグループだろうと思いました。
実際、今はPwC Japanに勤務していますが、自己紹介の際に最も良い反応が得られるのは「NTTグループで連結決算を経験した」というエピソードです。これだけのグループ規模の企業の連結決算を担当していたのであれば、ほとんどの企業には対応できてしまう、くらいの評価は頂けているのではないかと思います。
加えて身に付いたスキルとしては、英語によるコミュニケーションです。メールやチャット、資料作りといった文面ベースでのやりとりが主でしたが、日本人であれば言わなくても分かるようなことでも、海外の方とやりとりする際は背景や目的から具体的に伝える必要があります。英語力もそうですが、こうしたコミュニケーションメソッドや文化・商慣習について特に鍛えられたと思います。
――NTT時代で印象に残っているエピソードはありますか?
一つは、当時の勤務地だったオフィスビル内の他の会社の方々と異業種交流会を開催したことです。
50~100名くらいの規模で、立食パーティーやベンチャー企業の代表の方をお呼びしての講演会など、全3回を開催しました。 私の個人的なつながりがきっかけで企画した会でしたが、NTTビジネスアソシエの小椋社長(当時)の応援や、企画総務部長の公式な支持もいただくことができ、大規模な形で実施することができたことは思い出深いです。
もう一つは、他部署の業務を数日経験できる社内制度を実現したことです。
NTTグループは基本的にジョブローテーションがあり、1,2年ごとに異動することが多かったと思います。しかしそれではある程度会社全体について理解できるまでに20年近くかかってしまうことに、当時課題を感じていました。また、他部署の業務を知ることで、次に自分が挑戦したい業務や身につけたいスキルにも気が付くことができ、キャリアの可能性を拡げられるのではないかと考えたのです。
そこでNTTビジネスアソシエの更科事業部長(当時)が始められた「ご意見BOX」を通じてこの制度を提案したところ、有馬財務会計部門長(当時)の後押しもあり、採用していただくことができました。私自身もこの制度を活用し、事業計画を担当する部署や、会計制度設計を行う部署などで、様々な業務を経験させてもらいました。このようなボトムアップの取り組みが全部署に展開される風通しの良さは、NTTグループの特長だと思います。
こうした取り組みを行っていた理由の一つに、私自身の価値観があります。それは、性格や能力、長所や短所などを含む自分自身の有り様は、他者と比較して初めて浮かび上がってくるものだということです。
例えば無人島に一人でいたら、自分の背が高いのか低いのか、自分の性格が優しいのかきついのかって分からないですよね。だからこそ、なるべく多くの人と出会ったり、未経験の仕事を経験したりすることで、初めて自分の適性や志向に気が付けると思っています。そういった背景もあって先日のアルムナイ交流会にも参加しましたし、これからもできるだけ参加したいなと思っています。
――現在お勤めのPwC Japan有限責任監査法人に転職されたのは2023年ですね。どんな理由があったのでしょうか?
なるべく若いうちに様々な業界のクライアント企業のファイナンス部署と直接関わり、CFOアジェンダに基づいて業務プロセスの企画および構築を行っていきたいと考えたからです。
またコンサルタントという職種を選んだ理由には、ベネッセコーポレーション時代の経験があります。部署全体の黒字化プロジェクトに携わっていたときに、実は外部の財務コンサルタントにもお力添えいただいていました。この方のノウハウや知見にかなり助けられたことが非常に印象に残っていたのです。
NTTは大好きで、何なら骨を埋めるつもりでいました。しかしこの経験が強烈な原体験としてくすぶり続けていたので、自分の気持ちに正直になって一歩踏み出したというのが正直な背景です。
――なるほど。現在はどのようなお仕事をされているのですか?
財務報告アドバイザーとして、IFRS導入支援、財務報告プロセスの構築、PMO支援などを行っています。
IFRS導入支援に関しては、NTT時代に身につけたスキルがそのまま活きています。前述しましたが、NTTグループの財務管理体制や業務品質は他では類を見ないほどレベルが高いです。IFRSへの切り替えも、NTTグループであれば2,3年で完了したところが、10年たっても完了しない会社もあるくらいです。ですから、これまでの経験をそのままクライアントにお伝えするだけで、非常に喜んでいただけます。
財務報告プロセスの構築に関しては、クライアント企業が新規事業に参入する際のサポートが主な業務です。事業には事業ごとに法律が存在しています(ex.通信事業法)。新しい事業に参入すると、その法律に則った形で財務管理を行い、省庁への報告体制を確立しなければなりません。そのためのシステムや組織、最終的なアウトプットを作るまでを支援しています。
元々通信事業法以外の法律には明るくないので、その事業に関連する法律を短期間で理解し、かつクライアントに提案できるレベルにまで持っていかなければなりません。なかなか骨の折れる作業ではあります。
――勉強することが多そうですね。
そうですね。ただNTTグループ時代の業務も勉強しないとこなせなかったですし、周りも勉強熱心な方ばかりでした。
最近だと、ROIC経営に関する調査が必要になり、アルムナイコミュニティ内で質問を投げかけました。すると複数の方から有益なコメントを頂き、大いに助けられました。やはりNTTグループの財務出身の方々は知識や経験が豊かで支援的だなと、改めて実感しました。
私自身もこのアルムナイコミュニティを通して、アルムナイの皆さんはもちろん、現役の皆さんに少しでも貢献したいと思っています。NTTグループは日本の通信インフラを支えており、社会的な価値が非常に大きな会社です。しかし新卒で入社された方は、他社と比較ができないので、これまで述べてきたNTTグループの素晴らしいところになかなか気が付けないかもしれません。私自身の知見をもとに気付きを提供することで、皆さんのモチベーションやパフォーマンスを少しでも向上していくお手伝いができればいいなと思っています。
――ありがとうございます。鵜飼さんご自身の今後のビジョンについてもお聞かせいただけますか?
はい。前述したように、父親が経営者だったこともあり、将来的には自分もベンチャー企業のCEOやCFOなど、企業に関わる意思決定を直接下せるポジションにつきたいと思っています。
実は私はNTTグループ時代にMBAを取得しています。この時に課題に対して仮説を当て、それを検証しながら最短でソリューションまで持っていくというアプローチを学びました。そして現在のコンサルタント業務において、このアプローチをまさに実践しているところです。こうした学びと実践を積み重ねながら、将来の目標に向かっていきたいです。
将来のビジョンが明確で、それに向かって勉強と実践を重ねながら突き進んでいる鵜飼さん。優しい印象ながらも強い信念を持っている方だなという印象を受けました。
NTTに対する愛が深く、2人のお子さまも今でもNTTが大好きなのだとか。現役社員のために何ができるか色々と考えてくださっていることが、運営事務局としても非常にうれしかったです。
ぜひ今後も長くお付き合いしていけたらと思っています。今回はありがとうございました。
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