グランドデザインと現場をつなぎ、製造業DXを真の成功へと導く NTTグループ財務アルムナイインタビューVol.4 藤田 欣哉さん

NTTグループを卒業後も活躍を続ける、アルムナイの皆さんをご紹介する本連載。
第4回は2006年までの約7年間NTT東日本に在籍し、現在はアビームコンサルティングにて
執行役員プリンシパルを務める藤田 欣哉さんをご紹介します。

現在は主に製造業クライアント向けコンサルティングに尽力している藤田さん。ご自身の強みを、「戦略×財務×ITの狭間領域」をつなぎ、実際の問題解決に導く力であると分析していらっしゃいますが、NTT時代は問題解決力に課題を感じてもがいていたのだそうです。数々の壁を乗り越えてきたこれまでのキャリアと、今後のビジョンについてお伺いしました。

藤田 欣哉(ふじた きんや)さん

1999年、NTTに新卒入社。分社化後はNTT東日本へ配属となり、法人営業を経験した後に財務部門で活躍。
2006年に退職後、コンサルティングファームを数社経験。
現在はNECグループのアビームコンサルティング株式会社にて、製造ビジネスユニットの執行役員として、顧客企業の「戦略×財務×ITの狭間領域」をつなぎ、変革実行を支援するプロジェクトに注力している

目次

ITバブル目前、最後の1社採用でNTTに入社

――NTTに入社された経緯を教えてください。

私が入社したのは1999年で、NTTが分社化 される直前でした。当時はITバブル直前で、「これからはIT(情報通信)だ」という機運がちょうど高まっていた頃です。他にも外資系ITコンサルティング会社の内定を得ていたのですが、企業体としての安定性と、これから盛り上がるであろうITに携われるという両軸を満たしていたNTTに入社を決めました。

入社後はNTT東日本に配属となり、法人営業を経験した後、約4年間財務部に所属していました。資金計画、税務調査対応、組織改革やコスト競争力強化などの企画業務を、ジョブローテーションで毎年違う業務にチャレンジさせてもらい、とても良い経験を積むことができたと思います。

特に私にとって嬉しい誤算だったのは、税務のことをろくに知らぬまま参画した税務調査対応でした。NTTにはほとんど毎年と言っていいほど国税局の税務調査が入ります。その調査対応と、追徴課税への対策が主な仕事でした。キャッシュフロー経営の観点では税務コストは大きなインパクトを占めるため、「節税」は大事な企業努力です。そのため、税務当局から指摘されたままでは時には数十億円にのぼる追徴課税を最小限に抑えるため、日夜、税法の基本思想、原理原則を学びながら、反論に向けたロジックの検討やエビデンスの整理に注力し、結果を出すことができたのは非常に達成感がありました。私の税務知識は周囲より明らかに見劣りしていましたが、原理原則さえとらえていれば、論点の所在を明らかにし、議論の本質にフォーカスする、というアプローチは他の仕事と共通して有効であるということを学びました。

問題解決力を強化するべく、コンサルタントの世界へ

――コンサルタントに興味を持ったきっかけは?

企画業務を担当していた時のことです。NTTは良くも悪くも真面目な会社なので、やはりサービスや人員配置に過剰な点もありました。これらを改善して競争力を強化するにあたり、外部コンサルタントの力を借りたのです。その際、組織の常識にとらわれずゼロベースで改善案を考え、実行して結果を出すコンサルタントの姿に刺激を受けました。

当時、私は毎年異なる仕事にチャレンジしていましたが、仕事を覚えるのに精一杯で日常のルーティンに埋没していることに危機感を覚えていました。決まったルールの中で仕事をこなすことはできましたが、ルールを飛び越える問題解決能力に課題を感じていたのです。こうした能力を鍛え、ビジネスパーソンとして成長するために、コンサルタントの世界に飛び込みました。

コンサルタントとしての最初のキャリアは、外資戦略系ファームからスタートしました。財務系も検討しましたが、戦略系の中であれば事業と財務、両方を理解している点が他のコンサルタントとの差別化につながるだろうと思ったのが理由の一つです。こうした強みを活かし、M&Aや投資戦略など、戦略×財務のフィールドで様々なプロジェクトに携わりました。

とはいえ、最初の1年は全くついていけませんでした。よく先輩や上司から言われたのが「頭が固い」という言葉。コンサルタントがクライアントから重宝されるのは、社内にはないゼロベースの自由な視点と発想に基づく問題解決力があるからです。しかし自分は、ルールを自ら規定し、その中でどううまくやるかという方法論にとらわれており、この考え方のクセを打破するのに非常に苦労しました。それでもインプットとアウトプットを重ねるうちになんとかワークするようになり、その後財務アドバイザリーファームに転職。リーマンショック直後でしたので、主に電機メーカー等の事業再生に携わりました。

しかし、そこでも再び「頭が固い」問題にぶつかりました。事業再生という仕事はともすれば、「どのようにして銀行に借金を返済していくか」という目先の課題にとらわれがちなのですが、「銀行の論理に合わせた予定調和」というか、またしても「ルールの中でうまくやる」ことに拘泥してしまっていたのです。そこで、今度は事業再生の一環として、M&Aの売り手サイドとして携わっていた案件の、買い手サイドにいた戦略系ファームに転職。もっと幅広い視点が求められる環境に身を置くことで、新たな視点を得ることができました。

自身のオリジンであるITに回帰

その後も1社経験した後、次のフィールドを探し始めたタイミングで、改めて自分自身のやりたいこと、社会で本当に役に立てることを見つめなおしました。そこで、自らのオリジンであるITが抜け落ちていることに気が付いたのです。そしてNECグループのアビームコンサルティングに参画し、現在は執行役員を務めています。

私が強みとしているのは、「戦略×財務×ITの狭間領域」をつなぎ、問題解決する力です。ビジネス環境の複雑化に伴い、コンサルタントも専門分化が進んできています。しかしその分、戦略や財務、ITといった領域間でサイロ化が進んでいるようにも感じます。分かりやすい専門性は大事ですが、極端な話、コンサルタントの担当の違いは、クライアント企業にとっては「どうでもよい」話です。クライアントが求めているのは、自分が抱えている課題の解決。その課題を一面だけ切り取ってどんなに高度なコンサルティングサービスを提供したところで、コンサルタントの自己満足にすぎません。

例えば、昨今のDXでありがちなのが、システムだけ立派なものを作っても、現場で活用されないという落とし穴です。それは、現場の人材にとってそのシステムに入力する、活用するメリットがないことから生まれます。システムに入力することでその人の仕事が楽になるなどのメリットがあって、初めてシステムは機能するのです。こうした現場のリアルと上流のグランドデザイン、両方を理解して改革を導ける人は少ないのが現状です。

現場のリアルを理解するには、イマジネーションが必要です。私は、NTT時代に法人営業を経験しており、現場の一営業担当としてのインサイトや、自社のサービスや事業を理解しているかどうかで、財務の仕事の質に大きく差がつくことを実感していました。こうした原体験ゆえに、現場業務に思いをめぐらせる、興味を持つということの重要性を理解し、コンサルタントになってからも意識して行っていたことが、今の自分自身の強みにつながっているのだと思います。

人と人との出会いから化学反応を生み出していきたい

――NTTグループ財務アルムナイコミュニティには、どんなきっかけでご参加くださったのですか?

NTT東日本の資金担当時代の上司であり、現在はNTTファイナンスで取締役 財務事業本部 グループファイナンス部長を務めていらっしゃる橋本誠一さんにお誘いいただいて参加しました。当時、私がちょうど自身の問題解決力に課題を感じていたとき、橋本さんは既存業務を効率化し、どんどん新しい取り組みに挑戦していらっしゃいました。そうした姿を見ていたので非常にリスペクトしていましたし、だからこそ今もお付き合いをさせていただいています。

私ももうすぐ50代に差し掛かるタイミングです。70代まで働きたいというビジョンのために、これからどう動くべきかを考えていたところ、尊敬する先輩から「藤田さんは人脈をつないで新しい化学反応を起こす、プロデューサー型の仕事が向いているんじゃないか」とアドバイスをもらいました。確かに友人同士を引き合わせて何か新しいプロジェクトが立ち上がったりすると、自分自身も楽しいですし、自分ひとりの中からひねり出すよりも面白いアウトプットが生まれやすいと思います。ですから、このアルムナイコミュニティでも、世代を問わず色んな人にお会いして様々な学びを得つつ、もし機会があれば人と人とをつなげていくことにトライしたいと思っています。そもそも、「つなぐ」ことに興味があったから、新卒で通信会社のNTTに入社した訳ですし(笑)。こうした試みを通して、アルムナイのみなさん、ひいてはお世話になったNTTに恩返しができるといいなと思っています。

あとがき

NTTを卒業後、コンサルタントとしての長いキャリアの中で、ここには書ききれないくらいの様々な壁を乗り越えてきた藤田さん。そんな藤田さんがご自身のオリジンであるITに立ち返り、日本の製造業をDXで改革しようとしていることに、NTT出身者としてのスピリッツを感じました。

人と人とをつなげて化学反応を起こそうという試みにも、藤田さんのコンサルタントとしてのスキルとアルムナイという特性が非常にマッチしているように感じています。これから有意義な出会いが創出できるよう、事務局としてもサポートしていきたいと思います。藤田さんとお話してみたい方は、ぜひお気軽にご本人か、事務局までご連絡ください。

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