経営者と大企業の財務リーダー NTTを経て実現したそれぞれのキャリアビジョンとは
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NTTグループを卒業後も活躍を続けるアルムナイ同士でキャリアについて語り合う本企画。
今回はコンサルティング会社である合同会社スタンド・マネジメントで代表を務める岡野 英之さんと、サワイグループホールディングスでFP&A(Financial Planning & Analysis)を務める小島 希望さんにご協力をいただきました。
(プロフィール)
岡野 英之(おかの ひでゆき)さん
2009年、NTT西日本に新卒入社。本社財務部で原価管理、その後持株会社に異動して事業計画に携わった後、2017年に退職。知人の弁護士と法律事務所を立ち上げた後、2020年に自身のコンサルティング会社として合同会社スタンド・マネジメントを設立。その他NTT時代に取得した中小企業診断士の資格を活かした活動も行っている。
小島 希望(こじま のぞみ)さん
2008年、NTT西日本に新卒入社。本社財務部で資金繰り計画策定や資金調達に携わった後、経営企画部で予実管理に従事。2015年に沢井製薬(現在はサワイグループホールディングス)に転職し、現在は全社予実管理と資金繰り計画、資金調達、組織設計と運営管理など幅広い業務に携わっている。
――お二人はNTT時代、同部署だった時期があるのですよね。
岡野さん:小島さん、お久しぶりです。はい、NTT西日本の財務部に所属していた2011~2014年の3年間ご一緒していました。
小島さん:お元気そうで何よりです。私はその時代、資金繰りの計画策定や資金調達業務に従事していました。岡野さんは主に原価管理を担当されていましたよね。
岡野さん:はい。設備やサービスの原価を適切に算定するためのロジック整理や、算定結果の分析・報告などを行っていました。途中、持株会社に異動しましたが、2017年に退職するまでほぼ一貫してこうした管理会計に携わりつづけていました。
――岡野さんは2009年に入社、2017年に退職。小島さんは2008年に入社、2015年に退職されています。お二人は元々、入社当初から転職も含めてキャリアイメージを描いていたのですか?
岡野さん:はい。入社当初から終身雇用といったキャリア観はなく、所属する組織によらず、プレゼンスを発揮できる存在になりたいと思っていました。NTT時代も会社の制度を活用して、在職中に中小企業診断士のほか、簿記やIT関連の資格をいくつか取得し、会計に限らず幅広くスキルをつけていきました。
小島さん:キャリア観については私も同じです。大学時代に専攻していたマクロ経済学を実践できるような大きな会社で経験を積んだ後、規模の小さな会社に移り、経営全般をコントロールするようなキャリアを思い描いていました。
――岡野さんは現在、コンサルティング会社の経営を行っていらっしゃいますね。独立に至った経緯について教えていただけますか?
岡野さん:NTTに入社して3年目頃から、弁護士をしている大学時代の友人と法律事務所を立ち上げようという計画を少しずつ温めていました。この計画が実現できそうなタイミングで退職し、事務所立ち上げに関わる事業計画の策定、認知拡大や集客のためのマーケティング等に従事しました。その後経営が軌道に乗り、余裕も出てきた2020年、自身のコンサルティング会社を立ち上げました。現在は従業員が1名おり、2名で運営しています。
主な事業内容は、新規事業の立ち上げ支援です。クライアント企業の外部メンバーとしてチームに参画し、事業計画策定やKPI設定、その達成に向けたプランニングといった面で支援を行っています。ありがたいことにNTT時代の同僚や先輩方からお声がけいただくことが多く、クライアントはNTTグループを初めとする大手企業が中心です。また、中小企業診断士の資格を活かし、中小企業の顧問として経営に関するアドバイザリー業務を行ったりもしています。
引き続き法律事務所の仕事も兼務しており、現在は事務局として総務や弁護士業務のサポートを行っています。併せて、台東区の商工相談員 としても週1回勤務していて、区内の中小企業からの開業や経営における相談に対応しています。
小島さんは規模の大きな会社から小さな会社に移るキャリアを思い描いていたとのことですが、現在いらっしゃるサワイグループホールディングスも規模の大きい企業ですよね。どのようにキャリア観が変遷したのですか?
小島さん:NTT時代、財務部資金部門で資金繰り計画や資金調達業務に携わった後、経営企画部に異動し、約1年間予実管理に携わりました。前者でマクロ、後者でミクロな視点の両方を養うことができたのは非常に良かったと思っています。そのうえで、自分はどちらが得意なのか、やりたいのかを考えたときに、「ミクロな視点にこだわりながらもマクロを見据える仕事」を目指すことにしたのです。
そしてマクロ視点の仕事にも携わるならば、それなりの会社規模があった方が資金調達等インパクトのある仕事ができる可能性が高いです。そこで、売上高100億円以上5000億以下、そして自分が大阪出身なので在阪の企業、という2つの条件を加え、転職活動を行いました。
こうして縁あって入社したのが現在の勤務先である沢井製薬(2021年よりサワイグループホールディングス)です。他にも入社を迷った企業があったのですが、財務人材がほとんどいなかったことが決め手になりました。財務に関わる業務を幅広く担えますし、何より自分のことをとても求めている印象だったのが一番の理由です。
現在の主要業務は、FP&Aと呼ばれる財務プランニングと分析で、会社の財務情報を収集し、CEO、CFOの判断材料を作成することです。その他、資金管理、資金調達、予算編成も行っています。管理会計、財務のよろず屋のようなポジションと言えるかもしれません。
――そういった意味では、当初目指していた、経営全般をコントロールするような仕事が規模の大きな会社であっても実現できているんですね。今の仕事にはどんなやりがいを感じていらっしゃいますか?
小島さん:意思決定層に直接意見できる立場なので、自分の行動が如実に経営判断や業績に反映される点です。またM&Aにあたっての公募増資やサステナブル債の発行による資金調達など、思い描いていたスケールの大きな仕事ができている点もやりがいの一つです。
岡野さん:私も、自分自身の行動や成果がそのまま業績に跳ね返ってくるという働き方ができるので、仕事の手応えを感じられる点にやりがいを感じています。
NTTグループという大きな企業体だと、やはり自分の仕事が業績に直接的には結びつかないことに物足りなさを感じていました。また、他の企業と比べて現場担当者から意思決定層までに介在する人が多いとも感じます。そのため、担当者の想いや意志をスピーディ・ダイレクトに意思決定者に伝えるのが難しい。それはもったいないなと思っています。
小島さん:それは今の会社に来て私も感じています。転職してまず驚いたのが、経営層との距離の近さです。直接電話をもらったり、社内で声をかけてくれたりと、フラットなコミュニケーションができるため、相談や意見がスムーズに行えます。よって、意思決定もスピーディです。タイムリーな経営判断ができるという点は、大きな強みだと思っています。
逆に今の会社は基本的に中途採用しか行っていないということもあり、横のつながりはほとんどありません。NTT時代の同期とは今も年に数回ゴルフや飲み会で顔を合わせることができるので、こうした関係性をつくれたのは良かったと思います。
岡野さん:私もNTT時代の同僚から仕事の相談をもらったり、逆に副業として業務を手伝ってもらったりと、人脈という面では非常に助けられています。また、小さな法人を経営していて実感したのが、NTTならではの、億や兆といった単位を扱える仕事の魅力です。事業ポートフォリオや資金調達の選択肢も広いですよね。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」ということわざがありますが、自営業はこうした選択肢が狭く事業のダイナミズムに欠ける点は、デメリットとして挙げられるかもしれません。
また、言うまでもありませんがNTTは企業体としての安定性がずば抜けているので、自分自身の生活基盤も安定する点も魅力だと思います。
小島さん:自営業だと先が見通せない部分が大きいですし、頼れる同僚や先輩がいない中、一人で事業を背負うのは大変ですよね。岡野さんとはお会いするのは久しぶりですけれど、SNSでつながっているので投稿をよく拝見しています。前々から、「いつも何でも自分一人でやってすごいなあ」と感心していました。
岡野さん:ありがとうございます。私も今日こうして小島さんのキャリア観を聞くことができて、自分と近しい考えをお持ちであることが分かってうれしかったです。
NTT時代、職場にあまり同期や近い年代の人がいなかったので、なかなかこうした会話をする機会がなかったんです。そういった意味では、この財務アルムナイコミュニティで、同年代のメンバーとカジュアルな関係を築けたらといいなとも思っています。また、自営業という立場柄、資産形成や自己研鑽などが十分なのかどうか不安を覚えることが多いので、特に同世代のNTT出身者がそのあたりどうされているのかも気になっています。年代別の交流会などがあるとうれしいですね。
小島さん:私も年代別の交流には賛成です。我々が高齢化して若い新しいメンバーが入ったときにも、そのほうが参加しやすいと思いますし。今度東京に行く際はお声がけしますね。
岡野さん:はい、お待ちしています。本日はありがとうございました。
この日、約10年ぶりの対面となったお二人。両者とも、元々フラットなキャリア観を描いて
NTT西日本に入社し、それぞれのビジョンを達成しながら歩んでいる点が印象的でした。
そして岡野さんは経営者として、小島さんは大企業の財務リーダーとして会社経営になくてはならない重要なポジションにいらっしゃることを知り、改めてNTT財務からのネクストキャリアの幅広さを実感することができました。同時に、現在のお仕事から得た経験や知見も豊富であり、今後アルムナイ同士の交流によって互いの知見を共有する機会を積極的に作っていけたらとも思いました。
また交流会等でお会いできることを楽しみにしています。今回はありがとうございました。
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