営業先での「ある出来事」をきっかけに財務・会計のスペシャリストへ。 NTTグループ財務アルムナイインタビューVol.3 金谷 隆広さん
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NTTグループを卒業後も活躍を続ける、アルムナイの皆さんをご紹介する本連載。
第3回は2023年まで約13年間、NTT西日本に在籍していた金谷 隆広さんへのインタビューです。
最初の配属先である法人営業時代に経験した「ある出来事」をきっかけに、財務を志したという金谷さん。その後のキャリアを財務一筋で貫き、転職された現在は会計業務に従事しています。
その運命的な出来事とは?そして、「NTTで得た一番の財産は度胸」と言えるほど、様々な課題に飛び込み乗り越えてきた、そのキャリアについてお伺いしていきます。
(プロフィール)
金谷 隆広(かなたに たかひろ)さん
京都大学経済学部卒業後、2010年NTT西日本に新卒入社。主に財務部にて収支分析や原価管理等を担当した後、2024年1月、関電不動産開発株式会社に入社。現在は会計仕訳審査、会計処理検討等の会計業務に加え、事業部別収支分析、幹部へのレポーティング等、事業計画業務に従事
――最初のキャリアでNTT西日本を選んだ理由は何だったのでしょうか?
就職活動時は、コンサルティングや外資系金融など実力主義の業界と、逆にインフラ系を中心とした堅実な業界で企業探しをしていました。というのも、自分がどちらに向いているのか当時は分からなかったので、まずは試しに真逆の2方向を受けることにしたのです。
内定を数社獲得した後、各社にOB訪問をして働き方を聞いてみると、前者のほうはあまりにもハードで体が持たないのではないかと感じました。そこで後者にシフトし、その中で選んだのがNTT西日本です。
通信インフラという社会の役に立てる仕事なら、どんな業務に就いたとしても前向きに取り組めそうだと感じたのが、その理由です。また、当時NTT西日本はアプリケーションなどのサービス開発にも注力しており、維持管理だけでなく新しい付加価値を生み出せることも、モチベーションにつながりそうだと感じました。
――入社後はどんなお仕事をされていたのですか?
最初は、岡山支店にて中小企業を中心とした法人営業を行っていました。財務や会計の仕事に興味を持ったのは、実はこの時期です。
私は商談させていただく中小企業の経営者の方と雑談をするのが好きで、話し込むことがよくありました。その際に話の流れで財務諸表を見せていただき、経営についてご相談いただいたことがあったのです。
といっても、当時は表の読み方もよく分からず、経営コンサルティングができるほどの知識も持ち合わせていませんでした。商談ではお悩みをヒアリングしたり、通信費のコストカットなどを分かる範囲でお答えしたりするに留まっていましたが、「財務諸表を分析できるようになって、自社の経営判断に貢献できるようになったら面白そうだな」と、俄然興味が湧いてきたのです。
このきっかけを経て、異動希望面談時に財務に携わりたい旨を伝え、希望が叶い、2012年より本社財務部にて原価管理を担当することになりました。主に注力していたのは、サービス区分別収支の算定です。
サービスの存廃判断を行うには、各サービスのコストを算出することが不可欠ですが、1種類のコストが複数のサービスにまたがりやすいというインフラビジネスの特徴上、サービスごとのコストが不明瞭になりやすい側面があります。そこで、各サービスにかかる人件費や工数、設備稼働時間などを調査するところから分析を始める必要がありました。
たとえば営業の人件費であれば、営業部門のメンバーに営業活動の内訳について、2週間程度の期間を設定して入力してもらい、どのサービスに何パーセントのマンパワーが割かれているかを算出します。これらをトータルの人件費と掛け合わせて、各サービスのコストを計算していました。このような地道な調査を積み上げながら、サービス存廃に関わる意思決定に貢献していく仕事でした。
――その後も財務のキャリアを歩まれたのですか?
はい。先ほどの原価管理の次に配属となったのが、持株会社であるNTT(日本電信電話株式会社)の財務部門です。主に持株会社とグループ連結、そして主要会社の四半期決算の収支分析を担当し、経営判断に必要な情報の把握・分析や、経営課題の抽出を行っていました。
NTTグループの連結決算は、世界有数の規模感です。そのため、主要会社のたった一つの割引施策が大きなインパクトをもって決算に反映されます。こうした施策の効果分析などは非常に興味深く取り組むことができました。
これら以外にも、SAPBPC(予算・計画管理基盤アプリケーション)を海外子会社へ導入するという、私のキャリア上では稀有な業務も担当しました。システムの要件定義、検証に加え、実際に運用してもらうことになる海外子会社メンバーへのレクチャーやマニュアル作成まで行いました。
要件定義や検証は、NTTコムウェアとともに行いましたが、その際意識していたのは、会計の専門用語を使わず、なるべく一般的な言葉で伝えることです。
彼らはシステムについてはプロフェッショナルですが、会計には明るくはありません。これまではある程度の会計知識がある人との仕事がほとんどでしたが、この仕事を通して、前提知識のない方にも平易に分かりやすく伝えるスキルを身につけることができました。
海外子会社メンバーへのレクチャーとマニュアル作成で苦労したのは、やはり英語です。それまでの人生ではほとんど英語を実務として使ったことがありませんでした。会社の制度を利用しビジネス英会話スクールにも通ったのですが、正直この仕事ではあまり役に立たず……。
結局、自分で使える範囲の英語をベースに調べるなどしながら、何とか乗り越えることができました。
システム導入も英語でのコミュニケーションも、後にも先にもない種類の仕事ではありましたが、「やったことのないことでも飛び込んでみれば何とかなる」という度胸のついた良い経験となりました。
その後はNTT西日本に異動し、予実管理や原価管理に従事、その後NTTビジネスアソシエ西日本に異動して決算関連における効率化推進を担当するなど、2023年の退職まで財務に関わる幅広い業務を担当させていただきました。
――転職のきっかけはどういったものだったのでしょうか?
実は財務のキャリアを歩み始めて少し経った頃から、「会計の実務スキルを身につけたい」という思いをもっていました。というのも、今までの業務は出来上がった財務諸表を分析するのが主な仕事ですが、この財務諸表が完成するまでの具体的なプロセスは分からない。そこをしっかり理解したかったのです。
また、財務分析スキルは社内では重宝されますが、他社で通用するとは限りません。会社によって分析すべきポイントや分析に適した手法が異なるからです。一方で会計は、国内で汎用性の高い会計基準に精通し、これに則って財務諸表を作成することが求められます。そのため、会計実務のスキルを身につけることで、財務分野どこでも通用する人材になれるとも考えました。
会計実務への異動希望は出していたのですが、なかなか叶わない状況が続いていたので、意を決して転職活動を行い、現在のポジションのオファーをもらうことができました。
とはいえ、実際に転職するにあたっては悩みました。NTTグループで働いている間に出会った方々は皆優秀で人柄もよく、長年勤めていたおかげで社内の人間関係もかなり構築されていました。また、当時の出向先であったNTTビジネスアソシエ西日本の環境も恵まれていて、特に当時の上司はロジカルかつマネジメントも上手な方だったので、まだまだ学べることはたくさんあるだろうとも思っていました。
しかし、自分自身もマネージャークラスとなり、今から実務担当のポストに就くのは難しい状況になっていました。しかも自分自身としては、マネジメントに注力して結果を出せるまでのレベルにはまだ達していないという感覚があり、マネージャーとしてのキャリアを積む前に、やはりもっと実務を身につけておきたいという強い気持ちがありました。これらの状況が後押しとなり、転職を決意するに至りました。
――現在のお仕事について教えてください。
現在は関電不動産開発株式会社で、会計実務に関する業務を行っています。主な内容としては、会計仕訳審査や会計処理検討等の会計業務に加え、事業部別収支分析や、幹部へのレポーティング等の事業計画業務です。
会計に深く踏み込んだ仕事のため、やはりこれまでの経験と知識では足りない部分が多くあり、勉強の毎日です。しかし、NTT時代に経験したことのない仕事を次々と任せてもらえたおかげで、「走りながら考え続けていれば何とかなる」という自信がつきました。これは転職した現在も生きていると思っています。
――今後のビジョンについて教えてください。
まずは日々の業務と勉強を通し、会計実務のスキルを取得したいと思っています。また、不動産会社ならではの感覚や目利きの力も並行して育て、事業部の判断に対してアドバイスができるほどの力量を身につけていきたいですね。
また、会計業務の中でも不動産会社を選んだのは、実家が収益不動産を保有しているからという理由があります。そちらの経営に関しても何かしらのアドバイスができるようになれればと思います。
NTTグループ財務アルムナイコミュニティは、財務系のキャリアかつ、様々な企業で活躍されている方々と情報共有できることが大きなメリットだと感じています。特に会計に関する課題やトピックは多くの会社に共通するものだと思うので、積極的に意見交換や状況共有をしていきたいですね。これからもぜひ、この場を借りて皆さんと面識を拡げていけたらと思っています。
財務を入り口に会計実務に興味を持ち、その道を究める道を選んだ金谷さん。法人営業時代の出来事がその後、ご自身の強固なキャリア軸を形成するきっかけになったことは、非常にドラマチックだと感じました。
会計と分析、それぞれに精通した暁には、きっと多方面から頼られるスペシャリストになっていることでしょう。これからの金谷さんの歩みを楽しみにしています。
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