経営企画とIR――NTTドコモの経営の中枢に関わってきた経験を糧に、企業経営のエキスパートへ NTTグループ財務アルムナイインタビューVol.2 古藤 秀彦さん
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NTTグループを卒業後も活躍を続ける、アルムナイの皆さんをご紹介する本連載。
第2回は2016年までの約15年間、NTTドコモに在籍していた古藤 秀彦さんへのインタビュー
です。
主に経営企画やIRでキャリアを積んできた古藤さん。現在はコンサルティングファームで
クライアントのプロジェクト推進はもちろん、新規プロジェクト開拓や自社の採用活動など、企業経営に関わる多方面に注力していらっしゃいます。そんな古藤さんがビジネスパーソン
として最も成長したと感じるのは、NTTドコモでIRを担当していた時代だそうです。NTT時代
から現在に至るまでのキャリアについてお伺いしました。
(プロフィール)
古藤 秀彦(ことう ひでひこ)さん
2001年、NTTドコモに新卒入社。主に経営企画やIRなど、経営の中枢に近い部署にてキャリアを積む。
2016年、アクセンチュアに転職しコンサルタントの道へ。
現在はライズ・コンサルティング・グループにて、大手クライアントにおける新組織の立上げに向けた構想・実行支援や大規模システム導入案件のPMO等に従事。
加えて、新規プロジェクト開拓に向けた営業や自社の採用活動等、ベンチャーファームの拡大、質の向上に資する活動にも注力している。
――新卒時の就職先としてなぜNTTドコモを選ばれたのでしょうか?
私が就職活動をしていた当時はいわゆる就職氷河期だったので、選り好みをせず様々な業種の企業を受けていました。数社内定を獲得した後に気になり、終盤に受けた会社がNTTドコモでした。
ドコモは当時「iモード」のサービス提供を始めたばかりのタイミングで、就活生の間でも注目を集めていました。内定者たちも粗削りながらもバイタリティのある人たちばかりで、ここでなら面白い仕事ができそうだと思い、入社を決めました。
――入社後はどんな仕事をされていたのですか?
まずは約3年間、千葉支店営業部でドコモショップからのエスカレーション対応や、販売促進などの業務に従事した後、本社経営企画部に異動しました。これだけ年次が浅いタイミングで経営企画部に配属されるケースは稀少ですし、支店から経営企画部は全く見えない部署なので、私自身も寝耳に水でしたね。
異動当初は、販売現場周辺での経験と知識しかなかったものですから、上司や先輩たちのディスカッションで飛び交う用語すらも理解できず、途方に暮れていました。その様子を見た入社年次が一つ上の先輩が「お前は分かっていなさそうな顔をしているから、明日から特訓だ」と、昼休みに休憩室でお弁当を食べながら、数カ月間にわたって講義をしてくれました。
ケーススタディと当社で起こっていることをオーバーラップさせながら解説していただいた
ことで、現状の会社の目標・課題や、自分たちの部署がやるべきことが腹落ちし、あわせて
経営企画部のミッションや業務の基礎も理解することができました。
その先輩は優秀で、シニアクラスの方々からの評価も高い方でした。今思えば、その方に指導してもらうことを織り込んでの配属だったのかもしれません。実際、今の私があるのはその先輩のおかげです。情熱をもって惜しみなくノウハウや知見を後輩に伝えていくこと、それが
上の人間としてのあるべき姿であると学びました。
この事は今でも大切にしています。特に今私が身を置いているコンサルティング業界は、若手だろうと経験が浅かろうと、クライアントの前ではプロフェッショナルとして振る舞わなければならない、厳しい世界です。当然、挫折してしまう人も多いのが実情です。
悩んでいる若手がいたら、自身の部下かどうかに関わらず声をかけ、その壁を自分で乗り越えられるようサポートするようにしています。
――NTT時代で、印象に残っているエピソードはありますか?
2012年から3年間在籍したIR部時代が特に印象に残っています。当時の大きな役割としては、決算発表にあたっての準備と、決算発表当日、またそれ以降の投資家や証券アナリストの取材対応でした。
決算発表の準備は本当に骨が折れるものでした。発表当日が近づいてくると、経営幹部とディスカッションする機会も多く、沢山のリクエストを受け、連日夜遅くまで働いていました。当然疲労はピークに達するのですが、やりがいも非常に大きかったです。
NTTドコモという会社が資本市場の中で正しく評価され、投資家からの信頼をいかに得られるかどうかが自分たちIR部にかかっているわけです。そして、様々な部署がそのことに理解を示してくれて、貴重で有益なデータを提供してくれました。まさに全社のパワーを結集して資本市場に対峙していくと思うと、モチベーションが上がりましたね。
また決算発表後、投資家や証券アナリストからの取材を受けるのですが、私自身非常に有意義に感じていました。というのも、実は当時グロービスのMBAコースに通っており、そこで学んでいたことが、この取材対応等のIRの実務とリンクしていたからです。
受け答えの内容は事前に想定問答としてすり合わせをしておくのですが、実際の取材は100%台本通りにはいきません。経営や足元の動向について自分自身の理解をもとに、自分の言葉で語らねばならないシーンも少なくありません。私にとってこの場は、クラスで学んだことを振り返り、実践する場でもあったわけです。しかも、取材してくる方は、株式市場において非常に影響力のある方ばかりです。そんな方々に対して緊張感を感じながらも、私が会社の代表者として情報提供し、それによって彼らがドコモについての理解を深めてくれることに喜びも感じました。
ロードショーで海外へ行く機会も多かったです。海外ロードショーでは経営幹部と約1週間行動を共にするのですが、現在の吉澤相談役が常務経営企画部長だった頃に、香港へのロードショーでご一緒しました。実は吉澤さんは私が最初に経営企画部に配属された時の直属の担当部長でした。心から尊敬していた方だったので、数回の異動を経てこうしてまた近い距離で仕事することができ、うれしかった思い出があります。
――15年間勤められたNTTドコモからアクセンチュアに転職されたのは2016年ですね。どんな理由があったのでしょうか?
実は前述したMBAコースに通っていたことがきっかけです。同じコースの同年代の仲間はキャリア経験豊富で、活躍しているメンバーも多かったのですが、自身を振り返ってみるとNTTドコモ1社しか知らない。もっと自分自身の可能性を拡げていきたいと思ったときに、他の会社に飛び込んでみるのも良いのかもしれないと考えました。
その中でもコンサルティングファームを選んだのは、やはり自分自身が経営企画やIRを軸にキャリアを積んできて、経営全般に興味があったからです。色んな企業の経営に深く関われる、かつ大きく成長できるという両方の軸を満たす会社を検討した末に、コンサルティングファームのアクセンチュアに転職しました。その後ベイカレント・コンサルティングを経て、現在はライズ・コンサルティング・グループに勤めています。
――現在はどのようなお仕事をされているのですか?
大手企業向けのプロジェクトワークです。現在はクライアント基幹システム刷新プロジェクトでPMOを担当しています。様々な課題と向き合い、関係者と緊密にコミュニケーションして、プロジェクトの成功に向けて奔走する日々を過ごしています。タフさが求められますが、クライアントにとって社運をかけたプロジェクトだと思うと、否応なしに自分自身が鼓舞されます。
クライアントは大手企業、かつプロジェクトは多くの部署・階層を巻き込む大がかりなものがほとんどです。そのため、NTTドコモという大企業でコーポレート部門に長く勤め、多くの関係各所との調整を行ってきた経験は非常に役立っています。
またプロジェクトの傍らで、別のクライアントに向けての提案活動を行っています。ここでもNTT時代に培ってきた知識や人脈が非常に活きています。さらに、スキルフルで当社の掲げる想いに共感できる仲間を増やすべく、採用活動にも面接官として積極的に関わっています。
コンサルティングファーム経営の3つのエレメントである新規プロジェクトの開拓、プロジェクトのデリバリー、人材採用すべてに携われているのは、経営そのものを疑似体験しているようで、非常にやりがいがあります。こうした面白さを実感できているのも、NTTでの経験があったからこそです。若手のうちに経営企画を経験させてもらえて、これを軸にキャリアを積むことができました。また周りも優秀な方たちばかりで、こうした仲間に刺激を受けて引っ張られる形で自分自身も成長することができました。今でもNTT時代の仲間とは親交が深く、自分自身の宝になっています。
――アルムナイ同士のつながりもあるのですね。
はい。NTTグループ財務アルムナイコミュニティに関してはまだ入ったばかりですが、こうした魅力的で優秀な仲間たちと新たに繋がれるのはうれしいことですし、古巣と繋がりを持てることもありがたいです。
最近ではアルムナイをステークホルダーの一つとして位置づけようという動きも一部の企業で活発になってきており、アルムナイの注目度が増している印象です。自分で言うのもなんですが、アルムナイは古巣であるNTTのことも外の世界もよく知っている特別な存在だと思います。NTTグループの更なる発展にむけた企業経営に活かしてもらえるよう、私たちも協力していければと思っています。
――ありがとうございます。最後に、古藤さんご自身の今後のビジョンについてお聞かせいただけますか?
コンサルティング業界でもある程度経験を積んできたので、ゆくゆくは事業会社に戻って全社的な意思決定に関わっていきたいと思っています。自分が学んできたことを自社の事業でどう活かせるか、試してみたいですね。
――今後が楽しみですね。本日はありがとうございました。
「どこまでも経営が好き」と語る姿が印象的だった古藤さん。MBAコースに通って経営に対する知見を深めたり、さらに様々な企業の経営に関わるためにコンサルティングファームへ転職するなど、確固たる信念と行動力をもってキャリアを構築されていらっしゃると感じました。
また、約15年のNTTでの経験の中で様々な部署とのつながりがあったことから、人脈が広く、かつNTTをよく理解されていらっしゃるとも感じました。ぜひ、コミュニティサイトや今後開催される交流会にて知見をお借りできたらと思います。今回はありがとうございました。
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